【商社が輸入】天然ガスの値上がりと国産化について~千葉県ではなぜ安いのか?~

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 天然ガスの値上がりは大幅な物価上昇を引き起こしています。
天然ガスが価格上昇した理由は2点あります。
1点目はウクライナ戦争が発生し、各国にて行っているロシアに対する資源の輸入禁止措置です。
2点目はアメリカでのコロナ後における急激な景気回復です。

 先ずは、ロシアに対する天然ガス輸入禁止措置について述べます。
ロシアは天然ガスの世界2位生産国です。
そして、世界一の天然ガス埋蔵量を誇っています
ロシアの天然ガスが供給されないと他の国の天然ガスに需要が集中してしまいます。
そのせいで、ロシア以外の天然ガスの値段が上がってしまいます。
次にアメリカの急激な景気回復です。
コロナで経済に傷を負ったアメリカは、政府による大規模な現金給付(額は8500億ドル)などの金融政策を行いました。
その結果、景気が急激によくなり、インフレが止まらない状態です。
そのため、各資源も値上がりし、同様に天然ガスも値上がりが発生しています。
 これら2点の出来事が同時に起こったことにより、世界中で天然ガスが値上がりました。
 そして、今後、上海におけるロックダウン解除によって、中国の景気回復で天然ガスの需要があがるため、ますます天然ガスの値上がりが予測されています。



 では、天然ガスの値段が上昇すると、私たちの生活にはどのような影響が起こるでしょうか?
天然ガス禁輸の影響は、ガス料金の値上がりや、火力発電の電気代高騰、天然ガスを消費する産業の値上がりが予想されます。
 天然ガスを消費する産業は、運輸業界や、飲食業界など私たちの生活に密接しています。
天然ガスを消費するサービスが値上がりすることによって、私たちの家計に影響を与えるでしょう
例えば、年収300万円の家庭の場合、年間6万円の負担が増える可能性があります。※4
年間6万円は、食費に月3万円を使う人から見れば、食費2か月分の金額です。
つまり、天然ガスの値上がりは、私たちの負担が大幅に増えると考えられます。
労働者の賃金が長期間上がらない中、この物価高は、私たちの家計に悪い影響を与える可能性があります。
 この問題を解決するには、政府が天然ガスを国内で生産するよう働きかけるべきだと考えます。
その理由は国内に採掘可能な天然ガスが多く存在するからです。
さらに天然ガスの値段が今後、外国より安くなると考えられます。
 NHKによると千葉県では、2021年12月の輸入された天然ガスの家庭用料金は1カ月あたり平均5015円です。※3
 一方千葉県で採掘されたものは、1か月あたり平均5026円となっています。
2020年頃の天然ガスが安い時代だったため、国産ならびに輸入の天然ガスは値段が変わりませんでした。
 しかし、今回のウクライナ危機で輸入の天然ガスの需要が上がることで、確実に国内で生産されたものを購入する方が安くなりました。
 ウクライナ危機後、千葉県で生産されたものは値段の変動がないのに対し、輸入された天然ガスの家庭用料金は1カ月あたり平均5784円です。
千葉県の例をみると、国内で天然ガスを取った方が今後も安くなりそうです。
 国内には、天然ガスの埋蔵量が豊富になります。
日本で多く天然ガスが採れる場所は千葉、北海道、秋田、宮崎県です。
千葉県には、南関東ガス田という3685億㎥(年間埋蔵量が600年分)もある国内最大級のガス田があります。※1
ここでの生産は明治時代から行われており、千葉県を中心に国内に供給されています。
千葉県内では、天然ガスを供給するために2000本のガス井戸が採掘され、総延長600kmものパイプラインが張り巡らせています。※2
しかし、南関東ガスを含めた国内で生産された供給量は国内で消費する量の2.3%でしかありません。
先ほど述べた南関東ガス田の供給量を考えるとまだまだ天然ガスを増やせると思います。
国内で天然ガスが安定的に供給できれば、今回のウクライナ侵攻のような海外リスクに巻き込まれなくなります。
 ところで、疑問点が2つあります。
これまで、輸入と国内生産でほぼ変わらない料金なのに、なぜ日本で生産が広まらなかったのはなぜでしょうか?
それはいくつかの要因があります。
人件費が高いことが一つ目の原因です。
これまで、ロシアなどの資源国は人件費が安いため、天然ガスを安価で供給できました。
しかし、日本はこれまで人件費が高く、採算が取れませんでした。
今後、大幅な円安や、資源を持っている発展途上国の経済成長により、今後の人件費は相対的に日本の方が安くなると考えられます。
つまり、輸入よりも国内で天然ガスを取る方がコスト面で安くなっていくでしょう。
 2つ目は天然ガス国内に供給するためのインフラがないということです。
そして、インフラを整えるのにお金がかかることです。
この点に関しては、政府がインフラ整備に全面的に支援すべきだと思います。
国内で天然ガスのインフラを整備すれば、今後他国から供給する必要がなくなり、安定した供給が望めるようになるからです。
初期費用は掛かると思いますが、政府が全面的に出せば企業負担はメンテナンスにかかる費用だけになります。
そのインフラで天然ガスを供給する会社はコスト面でも他国に対抗しやすくなるのではないでしょう。
私はこれまで述べてきたことから、天然ガスの国内供給を阻む問題は解決できると思います。
だから、日本は天然ガスを国内で生産するべきです。

参考資料

※1 https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/479227/

※2 https://www.mapple.net/articles/bk/3640/

※3 https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/003/46/

※4価格上昇…“年収300万円未満”は“年間6万円負担”増 値上げ許容度「今後も低下へ」(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース

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